2018年11月6日火曜日

馬夫石へ(2018年10月20日(土))


 伊豆半島のSOTA山で残っている4カ所は、みんな登山道がはっきりしないものばかり。その中でもJA/SO-092はヤマレコで数件の記録があり、「激藪の隙間より」で有名なあの方も登っている模様です。それでは、とりあえず情報が最も多い、このJA/SO-092か出かけることにしました。今回は、自分の備忘録も兼ねて、長文です。

いろいろな記録を見ているうちに、このJA/SO-092は、馬夫石と呼ばれているポイントであることがわかりました。

 この山頂そのものに通じる登山道は地図にありませんが、このすぐ近くを通る稜線には登山道に表示があり、ここを通過する人の中で一部の人が少し足を伸ばしてこのピークを確認しているようです。

 この稜線をたどるのが最も確実なのですが、それではずいぶん距離があり、時間がかかりそうです。このピークだけを目指すための別ルートとして、北側の部落から山頂方向に伸びる道をたどることが考えられます。「激藪の隙間より」の筆者も馬夫石だけを目指し、そのルートをたどっています。また、比較的最近、同ルートを歩いている人の記録がヤマレコにありました。

 これら2つの情報から、次のことがわかりました。

     前述のルートは以前鉱山があった道を利用して上るルートである。

     今でも鉱山の名残、トロッコや廃棄された重機などが放置されている。

     鉱山事務所前までは車で入ることができ、駐車スペースがある。

     駐車スペースから先にも道は続いているが、どうもそれは違う方向に行ってしまう。

     駐車スペースからは廃道を上たどる。

     尾根付近には地図には記載されていない林道がある。

 私は一人で出かけることや、夜もそれほど怖くないのですが、どうも、廃屋など人工的の構造物が忽然と姿を現すのは昼間でも好きになれません。少し気持ちが重くなりましたが、とにかくこのルートで行くことにしました。

 土曜日の朝4時頃家を出て、一路、鉱山の事務所跡の前駐車場を目指しました。以外と早く、迷うことなく駐車場に到着。いつ廃業したのかは知りませんが、プレハブの事務所や倉庫などが今でも建っています。
 
 
 「これが行ってはいけない道だな!」と予習してきたためゆとりをもって確認できました。確か私の行く道は、沢を横断しなくてはいけないはず…ありました、ありました、そして渡れるところを示すようにピンク色のリボンまで。これを見つけて喜んで、リボンを追いました。リボンに導かれて小さな沢を歩き、少しづつ高度を上げて行きましたが、ふと、「鉱山があったところの廃道にしては、ずいぶん狭い道だな」などと疑問はもったものの、そのまま歩き続けてしまいました。歩き始めるときには一度GPSで方向を確認していましたが、その後はばく進してしまいました。いつの間にかリボンはなくなり、沢も急な斜面になりました。ここでようやく道を間違えたことに気づきました。

 元の道を下り、谷が広くなったあたりで、ヤマレコの足跡を目指して道なき道を横切り、このあたりが正規の道なのかと立ち止まってあたりを見回すと、コンクリートの電柱が立っているのが見えました。その方向に歩いて行くと、一段下がったところに、コンクリートで舗装されていたであろう明らかに車が通れそうな道幅の廃道がありました。どうしてこれをはじめから見つけられなかったのか、自分自身を疑いました。その道の下方は私が車を止めた方に続いており、車からたいした距離ではありません。
 
 この道に沿って登っていきます。所々に電柱も建っており、電線もついています。コンクリートはガタガタになってしまっており、それでいて結構きつい勾配があるため、歩いていて、決して楽ではありません。

 ひび割れたコンクリートの間から、細い木が育ってしまっているところもあり、そんな木をよけて歩こうとすると、蜘蛛の巣に引っかかります。ここのあたりの蜘蛛の巣ですが、なぜかやたらと糸の強度が強く、顔についてしまうとなかなか払ってもとれません。そんなことをしているうちにいくつかの建物がある場所に出ました。そこには置き去りにされた貨車というのか機関車トーマスに出てきそうな小さな貨車が放置されていました。

 
 

 さらにその奥へと足を進めると道は細くなり、谷の中に続く細い道になってゆきます。倒木が数カ所にあり、これを避けているうちにその道もはっきりわからなくなってしまいました。ヤマレコの足跡を見る限り、とにかくこの谷にそって登るようですから、安全なルートを探しながら、谷を登っていきました。ところがしばらく歩くと谷が狭くなり、しかも切断された木々がたくさん放置されている場所に行き着き、そこからは適切なルートを見いだせなくなってしまいました。立ち止まって、じっとあたりを見回して上れそうな場所を探しましたが、なかなかルートが見いだせません。そんなときふと築気づきました。どうもこのすぐ上方に広い道がありそうだ!ということを。なんとかその道まで這い上がろう!
 
 
 破砕された木が積み重なっているところを歩くのは危険なので、草が茂っているところで登れそうなところを探しだして、なんとかそこを登りました。そこには未舗装とはいえ車が通れるような林道でした。これが「激藪の隙間より」の作者が書いていた林道なのか、と思いつつ、山頂の方向に続く林道を歩き始めました。ところがしばらく行くと、どうも林道の向かう方向と山頂の方向というのか山の稜線の方向が違うようです。改めて、ヤマレコの足跡を確認すると、足跡は、途中で林道を離れ、山の稜線に行っています。足跡が林道を離れたと思われる場所まで引き返し、尾根まで上がれそうな場所を探しました。しかし、どう見ても簡単に尾道に上がれそうな場所はありません。尾根に上がれるところを探してとうとう林道に出たところまで戻ってしまいました。「もしかして」と林道をさらに歩いて逆方向に。すると見た感じでは尾根と林道の距離が10m程度ではないかという状況になってきました。しかし尾根に向かっては急斜面の崖で登れません。さらにしばらく歩くと、ついに見つけました。尾根と思われるところと林道の高さの差が3m程度でしかも人の足跡があるところが。



 当然ここを登ろうとしますが、つかまれるところもなく、足も滑ります。このとき、私は自分がチビで短足であることを恨みました。おそらく手や足がもう少し長ければ簡単に登れたのかもしれません。一度とりついて、見たものの戻り、こういうところで事故が起きるのだろうな?と思いながらも再トライ。なんとか登ることができました。そこには思った通り、きちんとした登山道がありました。尾根道に出たのです。この道ですが山頂とは逆方向にはどんどん下っています。もしやと思い、この道を山頂とは逆の方向に少し下ってみました。50mも歩くと、思った通り、林道とこの山頂の間をもっと楽に行き来できる箇所がちゃんとありました。ここを登ればよかったのです。でも、これで帰りは安心です。

 今までの不安や歩きにくさが嘘のように快適に足を進めることができました。ふと、私が歩いてきた斜面の反対側を見ると反対側にもなんと尾根道のすぐ下に林道が通っています。なんだこれは?とにかく、この尾根道をひたすら歩き続けると、急斜面で道がはっきりしない場所に出ました。しかもその左側にはこれまた車が通れそうな幅の道があります。どちらに行くべきか?方向的には広い道でも良さそうですが。とにかくこの急斜面を一度上がってみようと思い、登り切ってみました。そこはちょうど尾根道の分岐点になっており、登山道を示す黄色い杭も打ってありました。
 再び快適に尾根道を進行。一つのピークを越え、下るとおそらく先ほどの広い道の続きと思われる道がすぐ横を併走している場所に出ました。どうやら、この区間については、広い道を行った方がピークを避けて平坦に進むことができたのかもしれません。引き続き尾根道を進行。
 
 ほどなくして馬夫石との分岐箇所に到着。ここからは道はないと思いましたが、なんとなく道があり、色の違うテープがつけられていました。テープを信じて進んでいくと、馬夫石のピークに到着。三角点の杭と簡単な表示が出迎えてくれました。


 
山頂は予想通り狭い場所でしたが、山頂に続く緩やかな坂道に沿ってワイヤーダイポールが張れそうです。周りは木々に覆われ、展望はよくないのですが、木々の間から見える景色を見ていると、確かに周囲に比べこの場所が高く、意外と見通しがよいことがわかります。

 
 


山頂の三角点付近に生えている木にロープを結びそこを片側の端として、7MHzのワイヤーDPを設置しました。給電点も木の枝からロープで吊り、途中のワイヤーも細いこの枝のYの時のところに乗せてしまうといういい加減なものです。それでもFT-817SWRメータが1つだけしか触れないところまで追い込むことができました。
 
 7MHzのコンディションは上々でたくさんのQSOが聞こえてきます。それでも予定していた7.154は、空いていましたので、ここでCQCQをだしながら、ツイッターで案内を出しました。すぐに1局応答があり、QSOしている間にツイッターでUPL局が私の波を確認しているとの返答が来ました。QRZを出すとUPL局に加えRQO局の声も聞こえてきました。両局とも大変強力に入感。私の波もそれなりの飛んでいるようです。さらに数局とQSO。いったん呼ばれなくなってしまったので、CQマシーンを使ってCQを連発。するとまた呼ばれはじめ、切れめなく呼ばれてしまい、あっという間に29局とQSOこのなかには、よく読んでいただけるSOTAの仲間がたくさん含まれていたことが私にとっては大変うれしいことでした。

 十分満足したのですが、一応この場所の飛びを知るためにRH770を木の枝にクリップ止めして144MHzに上がり、SSBCQを出しましたが、応答なし。CQを出していた局に応答して、1QSO。430のSSBでもCQを出してみましたが、応答なし。今度はFMむ切り替えましたが応答なし。やはり土曜日はダントラの違法局が運用していて、駄目ですね。ねばればQSOできたかもしれませんが。

 もう一度144MHzに戻りFMCQを出して3局に応答いただきました。最後にQSOしたXMH局は静岡に住むYL局でSOTAの運用もしている局です。以前、私がSOTAの運用しているときにQSOしていただき、今年のハムフェアでもお会いした方です。彼女もこのSO-092を目指したことがあるが、ピークに到達できずに引き返したことがあるとのことで、山談義に花が咲いてしまいました。

 大満足して、昼食をとり、店じまいをして、登ってきた道をピストンで下山しました。下山は快適に進みましたが、見たことのない鉄塔が出現し、来るときに急勾配を登ったところに登山道の交差点があった場所を曲がり損ねたことに気づき、すぐに引き返しました。登りで尾根道にでるためによじ登った崖も、確かめておいた安全な道を通って林道に降りることができました。


 さて、問題はこの林道から登ってきた谷に降りることです。再び上から見てルートを探したのですが、どうしてもよいルートが見つかりません。結局、登ったときと同じルートでここを通過しました。その後は、ひたすら来た道を戻りました。最後の駐車場を見えるくらいの場所は、私は道をまちがえたために通っていない廃道部分をとおり、無事に駐車場に出ました。下ってみるとどうしてこの道に気づかなかったのであろうと不思議に思えるほど、道幅の広い道なのですが、草がたくさん生え、駐車場前には沢があるため、駐車場側からは気づき難い道です。廃道の最後の方にもやたらと蜘蛛の巣がたくさんあり、それをストックで避けながら進んだつもりでしたが、顔にたくさん蜘蛛の巣がつき、駐車場に着いたときにはめがねに蜘蛛の巣がまとまって張り付いているという始末でした。

 帰ってきてみると、谷から林道にあがる箇所以外は、特別に危険な場所もなく、それほど難しいルートではなかったと思えます。しかし、地図にある道がなかったり、地図に記載されていない林道等が多数あり、迷いやすい場所です。今度は、多少時間がかかっても尾根伝いに歩くルートで出かけたら、快適なのではないかと思います。当然今回、山では誰ともでいませんでした。ところで、廃鉱山の残置物は永遠にあのままなのでしょうか?環境を考えたら、撤去されることが必要だと思うのですが。

 駐車場から車を走らせたら、すぐに大粒の雨が降ってきました。さっきまでいい天気だったのに。実にいいタイミングでした。

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